自動車が販売される前の認証試験では、厳しい排出ガス性能試験が行われています。その後、普及する多くの車両が認証試験時の性能を維持できているか、という点について、車検でアイドリング時の有害成分(一酸化炭素COと未燃炭化水素HC)の濃度測定が行われます。このアイドリング時の排出ガス濃度測定は、昭和45年に深刻だった公害問題に対応するため、当時としては世界的にも早い段階で取り入れられました。しかし、時を経て自動車の性能や技術が大きく進歩すると、それだけみれば異常が発見できるか、というと難しい状況になっています。そのため欧米の多くの国では、実際のガス濃度の測定から、車両側の自己診断機能(車上故障診断装置:OBD)を活用した検査へと移行しています。日本においても、それが可能かどうか、技術的な課題、費用対効果などの調査検討を行っています。例えば、OBDによる診断で問題ないものであれば排出ガス性能は概ね維持されている、といえるのですが、診断項目によってはある程度の走行をしなくては診断がされないものもあります。有効な診断がなされなければ、性能が維持できている、といえません。そのような「未診断」の車両が実際にどれくらいあるのか診断装置(スキャンツール)をつないで多くの車両のデータを収集するなど(調査状況を写真1に示します)、導入に向けた調査を進めています。