交通安全環境研究所 National Traffic Safety and Environment Laboratory

026 夏の高校野球と工業立国ニッポン!
2011年08月02日
鈴木 眞弓(企画室)

 全国高校野球選手権大会「夏の高校野球」が8月6日に開幕します。自分の出身県を応援したり、初出場校を親のようなハラハラした気持ちで見つめたりと、毎年様々な楽しみ方がありますね。

 さて、最近高校野球を見ていて気づいたのですが、高校の統合や、単科高校が普通科高校になることで、どんどん名前が変わっています。今回は残念ながら出場を逃してしまいましたが、静岡県では東海大第一と東海大工業が合併して「東海大翔洋」など、随分格好良い名前に様変わりしています。また、愛知県の中京女子高校が共学校となり、「至学館高校」として甲子園に初出場します。とくに校歌にドラムが入っていることや、「歌詞がJ-POPのようだ」と評判になっていることから、ちょっとしたブームを巻き起こしつつあります。ご存知ない方はこちらを検索サイトでしてみてください(至学館 校歌)。
 こういった傾向も少子化の影響による募集人員の減少等によるもので、学校経営上致し方ないと思うのですが、それであればこそ、昔ながらの○○工業や、○○商業という名前を聞くと、一途な感じというべきか、ひたむきさが感じられて、ついつい応援したくなるものです。

 今年の徳島県大会の有力校に、「鳴門市立鳴門工業高校」が挙げられていました。プロ野球の現役選手では、千葉ロッテマリーンズの里崎智也捕手等を輩出した名門工業高校です。この鳴門工業高校も、来年鳴門第一高校と合併してしまい、残念ながら来年から「鳴門渦潮高校」と名前を変えてしまいます。地名+名物の黄金コンビは、水島新司先生(※)の漫画作品を彷彿とさせますが、いにしえからの工業高校のアイデンティティは薄くなってしまいます。今年、鳴門工業の選手たちは、最後の「鳴門工業の校歌」を甲子園で斉唱せんと、厳しい予選に挑んだのですが、惜しくも準々決勝で涙を飲んでしまいました。
 この鳴門工業の校歌を紐解くと、日本の高度成長期の「工業」に対する誇りや、心意気というものがストレートに伝わってくる歌詞です。
 大人の事情で歌詞は紹介できないので、ぜひこちらを検索してみてください。(鳴門工業 校歌)

 検索しましたか?

 工業によって、ニッポンを素晴らしい国にしたい!という使命感。そして創意や工夫で困難に立ち向かおうとするエンジニアとしての矜持が、聞く人の胸を熱くします。戦後の工業立国ニッポンを支える心意気がこの上なく感じられる「男前の校歌」です。

 もうひとつ甲子園常連校の工業高校の「男前の校歌」をご紹介します。
 今年は岡山県大会のベスト16で敗退してしまったのですが、倉敷工業高校も、熱くなる歌詞です。


♪倉敷工業高校校歌

水島灘の 沖ゆく白帆も
あこがれ仰ぐ 緑のいらか
轟くエンジン 飛びちる火花
意気と力の 溢るるところ
我等が学舎 倉敷工業


「轟くエンジン 飛びちる火花」
 日本の校歌で唯一無二のメタリックな歌詞がここで表現されています。まるで少年向けアニメのような、直接的な重厚感・金属感溢れる表現ですが、裏を返せば、日本の少年たちはそういった歌詞を何度も聴き続けて、工学・科学に対してワクワク感や希望や憧れを抱き、DNAに深く深く刷り込まれ、「科学の子」になっていくのでしょうね。
 実習では、手のケガにも気をつけなければならないでしょう。でも、自分の技術や創意が日本を支えるんだという心意気で乗り越え、油にまみれた作業服を着替えて、泥まみれになりながら白球を追う。戦後から脈々と続く日本男児の原点がここにあるように思います。

 今年の夏の高校野球で、工業高校(系)の出場校は、宮城県の古川工業高校、岐阜県の関商工高校、三重県の伊勢工業高校です。甲子園のグランドで「科学の子」たちの校歌が斉唱されることを願ってやみません。


(※)野球漫画の第一人者。代表作に『野球狂の詩』、『ドカベン』、『あぶさん』 など


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