交通安全環境研究所 National Traffic Safety and Environment Laboratory

018 年々歳々
2010年10月01日
米澤 英樹(自動車安全研究領域 上席研究員)

 学生時代以前には、井の頭公園や深大寺には全く来たことがなかったのですが、井の頭公園の緑や、海技研本庁舎周りの緑と、広大な研究所の雰囲気が気に入って、就職が決まって三鷹に通う様になってから、もう30年以上も経ってしまいました。

 井の頭公園の緑は相変わらずだし、海技研の本庁舎の周りもあまり変わっていない様に見えます。けれども、電信柱のかげでかろうじて歩行者が守られている感じだった三鷹駅から航技研へのバス通りや、吉祥寺からのバス通りの幅は、広い歩道を差し引いても随分広くなりました。井の頭公園沿いの歩道や、航技研経由で調布へ行く道の深大寺の入り口周辺も、小綺麗になりました。もっと身近なところでは、交通研の前の30m道路(※1)が、船研(海技研)の正門の前で、行き止まりになっていました。バスにしても、冷房化や低床化が進み、なにやら中型や小型のものも多くなってきています。

 身の回りのものでは、PCを代表とする電子装置(何かこの言葉自体が古い気もしますが(笑))の発達が著しいと感じられます。良く例に出されるのが、携帯電話でしょう。単なる通話の手段から逸脱して、インターネットの端末としての機能など、普及初期のパソコンやワープロの機能を遙かに超えたものがこんな小さな箱に内蔵されているなど、数年前でも想像がつかなかった程と思うのは私だけで無いでしょう。

 自動車を取り巻く環境も、自家用車(これも死語かな?)を持つことがあこがれだった学生時代から、若者の自動車離れが話題に挙がるほど、変わってきていることは確かでしょう。

 自動車の安全装備に関しても、以前はエアバッグなどの複雑な機構を、普通の車に搭載することなど絵空事にしか思われなかったものですが、今はどの車にも搭載される様になるなど、外観以上に変化している筈です。

 実は心の中では、古い車は鋼板も厚いし、重量や大きさが大きい一方で、今の車はクラッシャブルボディーにはなっているけど、客室とボンネット部分の剛性差を付けているだけで、実質は華奢なのではあるまいかと密かに思っていました。ところが、アメリカのあるwebsiteで、50年前の乗用車と今の乗用車を衝突させている画面を見つけて見たところ、テールフィンの着いたごつい50年前の車は哀れな状態でした。車室の変形、乗員(勿論ダミーだが)の傷害がまるで違うことを見て、月並みですが技術は確実に進歩しているのだと、ホッとしたことがありました。

 一見、変わりがない様な三研(海技研、電子研、交通研)の中も、古い建物がだんだんと新しい建物に置き換わり、木々が大きくなったりする中、研究所が独立行政法人化され、研究所の名称が変わり、交通研の場合は場所も電話も変わりないのに住所だけが変わったりしました。

 それにも増して、本来の行政機関の研究所の役割の比率が高くなって、いろいろな面で忙しくなってきたのは事実です。以前のレクレーションやスポーツあるいはその他の活動にも一生懸命になっていた感じが、今薄れている様な気がします。

 物事の本質や真理を追究する「研究」と、はっきりした裏付けがない中で物事を判断しなければならない「行政の仕事」は、本来同時に成り立たないものかも知れません。何かにつけて、細かく真理を追究することにこだわる研究者にとって、外側からその方向そのものが正しいかどうかを判断することが必要とされます。どんな時にも、いろいろなことに関心を持つ余裕が、その判断の助けに必要なのではないのかと、最近思い始めているところです。一寸手遅れですが・・・。

※1 東八道路

側面衝突の実験状況 (昭和56年)


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